GISで見る平成26年8月大雨による広島市の土砂災害

平成26年(2014年)8月20日早朝、広島市北部の安佐北区と安佐南区で大雨による崩壊や土石流が発生しました。安佐北区では大規模な土石流のため多くの方々が被災しました。報道や住民の方々の話によると、安佐南区での土石流は20日午前3時40分頃と4時頃に発生したとのことです。(株)防災地理調査では、地理情報システム(GIS)を用いて、広島市の土砂災害と地形・地質・雨量等の関連性を検討しました。

図1 崩壊・土石流発生位置図 赤丸が発生位置

崩壊・土石流発生位置は国土地理院撮影(8月20日、21日撮影)の斜め空中写真から特定しました。崩壊地は北東-南西方向に直線状に並んでいます。大田川-根の谷川の方向と一致しています。崩壊地は158箇所判読されましたが、遠方に写っているため位置の特定ができなかった崩壊地が数箇所あります。比較的規模の大きな崩壊では土石流が発生しています。

図2 地質と崩壊地との関係

図3 地質ごとの崩壊・土石流発生頻度

崩壊・土石流は花崗岩(中生代白亜紀)で最も多く発生しています。新鮮な花崗岩は石材として利用されるように固い岩石ですが、風化が進むと土砂状になり(マサ土)崩れやすくなります。
次に多いのは中生代堆積岩です。中生代ジュラ紀に海底に堆積した砂や泥が固まって出来た岩石です。新しい花崗岩の熱を受けて(接触変成作用)緻密な岩石(ホルンフェルス)に変化しています。安佐南区八木地区で発生した土石流の中には、中生代堆積岩の崩壊がきっかけとなったものもあるようです。
中生代火山岩類は小規模な崩壊が多く発生していますが、安佐北区高松山東方では規模の大きな土石流が発生しています。
地質図は産業技術総合研究所地質調査総合センター (編)20万分の1日本シームレス地質図を使用しました。


被害状況写真


図4 雨域の変化

図5 2014年8月19日〜20日の毎時雨量

気象庁、国土交通省、広島県の雨量データを基に8月19日〜20日の雨量をまとめました。
広島市周辺では19日20時頃から雨が降り始めています。雨域は北東-南西方向に延び、強い雨域は20日午前2時には廿日市市付近にありましたが、3時〜4時は災害の発生した安佐北区・安佐南区に移動しています。

図6 8月19日20時〜20日6時の累加雨量

豪雨は局地的だったことが分かります。南側にある呉市ではほとんど降っていません。崩壊・土石流の発生地点(黄丸)は累計雨量220mm以上の範囲に集中しています。

図7 累加雨量と崩壊・土石流発生数の関係

累加雨量220mm以上で崩壊・土石流が多発する事がわかります。図7では220mmで災害発生数が最も多く、雨量が多くなると災害が減少するように見えます。これは崩壊・土石流多発地域では 雨量220mmの範囲が最も広く、これより雨量の多い範囲が狭まるためで、雨量が増加すると崩壊・土石流の発生する可能性が低下するというわけではありません。

図8 毎時雨量・累計雨量

高瀬(位置は図6参照)では19日19時から、三入(位置は図6参照)では20時から降り始め21時〜23時頃にはやや強く降りましたが、24時から20日1時には小康状態になっています。2時頃から再び降り始め、3時〜4時には時間雨量80mm〜100mmの猛烈な雨が継続しています。この豪雨により、4時頃崩壊・土石流が発生しました。

図9 傾斜と崩壊・土石流の関係

傾斜角20°〜40°の斜面で多く発生しています。10°未満の緩斜面でも崩壊が発生していますが、これは山頂緩斜面での崩壊です。

図10 崩壊・土石流発生地点での累計雨量と傾斜の関係

累加雨量220mm以上で崩壊・土石流が発生し、傾斜角20°以上の斜面では多発する傾向があります。累加雨量200mm以下の斜面でも崩壊が発生していますが、これらは人工斜面です。

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