2011年2月22日現地時間12時51分にクライストチャーチ近くでM6.3の地震が発生しました。前年の2010年9月10日にはクライストチャーチの約50km西でもM7.0の地震が発生しています。この二つの地震の震源の深さは5kmと浅く直下型地震であったため、大きな被害となりました。この地域にはこれまで活断層の存在は知られていなかったのですが、活動間隔が長いため、地形的な証拠が残されていなかったためかもしれません。
(株)防災地理調査では、スペースシャトル標高データとランドサット画像を用いて、ニュージーランドの活断層を画像化しました。
ニュージーランドは太平洋プレートとオーストラリアプレートの境界部に位置しています。赤丸は1929年以降に発生し、被害の生じた地震です。北島の東側、南島の西側に多く発生しています。クライストチャーチ付近ではこの100年間くらいは被害の生じる大きな地震は発生していなかったようです。
スペースシャトル標高データを用いて鳥瞰図を作成し、活断層を重ねました。アルパイン断層、ホープ断層など多くの活断層が明瞭に読み取れます。
ランドサット画像に活断層を重ねました。2010年9月4日には、クライストチャーチから50kmほど西側でマグニチュード7.0の大きな地震「カンタベリー地震」が発生しました。この地震と2011年2月22日のクライストチャーチ地震は活断層沿いで発生していません。今まで知られていない活断層が動いた可能性もあります。
クライトチャーチの北西側にはサザンアルプス山脈があり、山地内や縁に多くの活断層が知られています。なかでもアルパイン断層とホープ断層は活動度が大きく2,000年以下の周期で活動を繰り返しています。
1929年3月9日には活断層(Poulter断層)沿いでM7.1の地震が発生し、道路、鉄道、家屋に被害が生じました。震央近くでは大規模な地すべりが発生し、崩壊土砂は2年後に5km下流まで川を流れ下りました。このときの断層変位は4mと考えられています(ニュージーランド政府のウェブサイトから)。
アルパイン断層の北西側に新生代の堆積岩、南西側に石炭紀-白亜紀の変成岩・二畳紀-トリアス紀のグレイワッケ(砂岩の一種)が分布しています。岩石の固さが違いますので、地形の違いが良くわかります。谷の屈曲や低断層崖などをたどると、アルパイン断層の通る位置を読み取ることができます。 山頂付近で紫色の部分は積雪、白色の部分は標高データの欠落部です。
ランドサット画像にスペースシャトル標高データを重ねた鳥瞰図です。立体化することにより、アルパイン断層の位置がはっきりとわかります。
【引用資料】
1. スペースシャトル標高データ(アメリカ地質調査所)
2. ランドサット画像 p074r909_7dt20020311_z59(NASA)
3. 地震データベース(Geo Net ニュージーランド)
4. 活断層データベース(GNS ニュージーランド)
5. アルパイン断層地図 (Otago univ. ニュージーランド)